地元の大学や企業と連携し、イノベーションを担う産業人材の育成と確保に取り組んでいます。

北九州地域産業人材育成フォーラム

[forum]フォーラムコラム

都市と企業が表裏一体で成長する時代の終焉。20年後のモノづくりのまちを支えるための人材育成

◆ 地域連携型教育システムの構築を目指す
経済のグローバル化を背景に生産拠点の最適地化の動きが中小企業にまで及びつつあり、都市と企業が表裏一体で成長したかつての関係が断ち切られ始めている。1901年国営八幡製鐵所の建設以降、わが国の産業史を飾ってきた鉄都北九州は、産業の構造転換、空洞化などの曲折を経て、今また、グローバル化と少子高齢化を背景に新しい構造問題に直面している。

20年後の北九州地域経済の環境は? モノづくり企業はいつまで都市や地域を支え続けられるのか?――ということが論じられるようになっている。

鉄冷えの時代に誕生し、北九州地域の活性化に取り組んできた公益財団法人北九州活性化協議会が中心となって、この地域的な課題への対応策を検討してきた。そして、その1つの方策として「中堅・中小企業の経営力強化のための人材育成が必須であり、産学連携による地域連携型教育システムの構築が必要である」ということが提示された。

これを踏まえ、大学界、産業界、地域社会が連携・協働して産業人材育成の地域システムづくりを目指す「北九州地域産業人材育成フォーラム」が2011年5月に発足し、産業人材育成フォーラム事業は、北九州市の「成長産業戦略推進会議」の重点事業に採択された。

◆ 青少年育成から社会人教育まで 
地域の中堅・中小企業の経営力強化や次世代のイノベーターの育成を目的とした産業人材育成事業は、大学におけるキャリア形成にとどまらず、社会人のスキルアップ・リカレント教育や青少年の育成に至るまで、各段階、各分野において取り組まねばならないものである。フォーラムの事業体系は、以下に示すように大学生、社会人、青少年を対象にする3つのプログラムで構成されている。

① 新規産業人材のキャリアアップと雇用機会創出を目的とする「高度人材育成プログラム」

② 地域企業の中核専門人材の育成と経営・管理者の育成を目的とする「社会人育成プログラム」

③ 産学連携による早期工学教育の環境づくりを目的とする「青少年育成プログラム」


◆ Win-Winのインターンシップ
地域の理工系学生の社会人基礎力の向上と中堅・中小企業の高度人材採用機会の創出を目的に実施する「地域連携型インターンシップ」はフォーラムの中核事業である。

地域の各大学はいろいろな形でインターンシップを実施している。しかし、運営システムは未整備で、受け入れ企業の確保等多くの課題を抱えている。一方、地域の中堅・中小企業に対する学生の関心は薄く、企業の意向に反して卒業生の地元就職率は1割程度の状況にあり、大学と中堅・中小企業の間に、双方のニーズを踏まえた有効なコミュニケーション機能をつくることが求められていた。

そこで、フォーラムの地域調整機能と事業開発機能を駆使して、中堅・中小企業を対象にした地域一体型のインターンシップ事業を開発し、実践的な交流機能を地域システム化することで、この地域課題の解決に取り組むこととした。

初年度(2011年度)は、九州工業大学(九工大)と北九州市立大学(北九大)の2大学と連携し、企業42社、学生63人の登録を得て、地域一体型インターンシップ事業を実施した。初めての試みでシステム設計も不完全な環境の中で、関係機関の連携や大学の既存システムとの折り合いを付け、一定の成果と今後の可能性を確認しておおむね計画通りに事業を終了した。

メインの研修と合わせて、Win-Winの効果を創出するためのサポート事業の開発、研究も行い、1年間に11の事業を体系的に実施する「地域連携型インターンシップ」のビジネスモデルの基本形を構築した。また、インターンシップの運営実務をマニュアル化し、関連資料・書式等と共にCD-ROMに収録した「地域連携型インターンシップガイドCD」も製作し、事業の拡充に大いに活用している。

2年目の本年のインターンシップ事業は、九工大と北九大に西日本工業大学と北九州工業高等専門学校を加え、国立、公立、私立、高専と環境を異にする4校体制で実施した。昨年の経験も踏まえ、大学や企業内の運営体制の改善、整備も進み、学生は2.5倍の156人、企業は1.5倍の63社が登録して、大きな成果と新たな研究課題も残して2年目の事業を終えた。

今後は、フォーラム事業の企画・開発機能である「インターンシップ研究プロジェクト」において、企業の課題解決や研究開発等をテーマとした「実践型インターンシップ」や、グローバル人材育成のための「海外インターンシッププログラム」等、企業の経営ニーズに対応したインターンシップ機能の開発と事業化を進めていく。 


◆ ステークホルダーの機能をつなぐ 
フォーラムの事業運営は、ステークホルダーの機能をつなぎ、産学連携による運営システムを構築して、これを地域事業として実施することを基本にしている。

事業を協働実施する組織等は、3つの理工系大学・高専をベースとして、地域の中堅・中小企業を中心とした産学官民の産業人材育成にかかるステークホルダーである。

高度人材育成プログラムではフォーラム事務局のコーディネートのもとに、4校の学生支援部門と地域企業が連携、協働してインターンシップ事業を一体的に運営する。

社会人育成プログラムでは、MBAなどの各大学の専門機能や制度を活用し、中小企業の中核専門技術者を対象にした社会人ドクターの取得促進や、経営者を対象にした経営学講座などの実践的プログラムを企画し、地域と大学の双方が共に発展する好循環を生み出す環境を構築していく。

また、青少年育成プログラムは、次世代のイノベーターの育成を行う北九州イノベーションギャラリーと理数教育支援拠点の形成を目指す九工大の理数教育支援センターを中心に、地域における早期工学教育のソリューション機能の構築を目指す。

こうした事業を円滑に進めるためのフォーラムの組織体制の特徴は、大学の学長等関連機関の長で構成する「推進会議」と学部長等の事業部門長および有志企業で構成する「企画部会」のタテ型の運営体系と、研究・開発機能として4つのテーマ別研究プロジェクトを組織している点である。

また、本年中には、フォーラム事業をCSR(企業の社会的責任)の視点から協働する有志企業で組織する「企業部会」を編成し、企業ニーズを踏まえた事業実施と企業負担金による自立的事業運営の環境づくりを行う。


◆ 人づくりのまち=北九州
大学での学びと企業での体験とをしっかり連動させ、産学連携による実践的なキャリア教育である「コーオプ教育(Cooperative Education)」を導入する大学も生まれている。産学連携による人材育成は今後さらに重要な国づくり、地域づくりのテーマになってくるものと考える。北九州市は、製鉄、セラミックス、メカトロ・ロボット、化学、半導体、自動車、情報、環境など各分野の大企業が生産拠点を置き、その裾野に広がる高度な技術と人材は多様を極める。こうした地域資源を生かし、地域ぐるみで産学連携の可能性を探求し、「人づくりのまち」を北九州市に冠することができるよう事業の拡充を図っていきたい。

執筆者 プロフィール

公益財団法人北九州活性化協議会 専務理事 山﨑 朖

1946年北九州市生まれ。1969年同志社大学経済学部卒。1976年より西日本産業貿易見本市協会にて都市開発、コンベンション政策を研究、全国各地の展示場建設、運営のコンサル等を実施。1992年より北九州市貿易課長、国際経済部長としてFAZ政策および環黄海経済圏の経済交流政策等を担当。北九州貿易協会専務理事を経てH22年3月より現職。「KPEC産学連携研究会」を主管し、産業人材育成フォーラムの設置を提言。 北九州地域産業人材育成フォーラム事務局/ 公益財団法人北九州活性化協議会 専務理事/ 九州工業大学 産学連携推進センター 特任教授